GA4:100ドメインでクロスドメイン

GA4

クロスドメイン設定可能なドメイン数の上限

Google Analytics 4 (GA4)では、同一プロパティ内で最大100件のドメイン条件をクロスドメイン計測に設定できます​ittechbuz.com。これはつまり、最大100の異なるドメインを単一のGA4プロパティで横断的にトラッキングすることが可能です。実際、GA4の管理画面(データストリームの「ドメインの設定」)でクロスドメインを構成する際、エディタ権限があれば100件までのドメイン条件を追加できます​ittechbuz.com。この制限は公式に示されており、100ドメイン規模のクロスドメイントラッキングも技術的にはサポートされています。

約100ドメインを対象としたクロスドメイントラッキングの実例

世界的にも100近い多数のドメインを一括計測する例は存在します。例えば、アメリカ政府のDigital Analytics Program (DAP)では、GA4(エンタープライズ版の360)を用いて数千に及ぶ政府サイトのトラフィックを単一の共有アカウントで計測していますdigital.gov。これはGA4プロパティ一つで多数の異なる「.gov」ドメインを横断してユーザー行動を収集・分析する大規模事例と言えます。また、Google公式コミュニティでも「100のドメインでクロスドメイン計測したい」との質問が寄せられており、単一プロパティで100ドメインを計測するシナリオ自体は想定済みであることが伺えます​support.google.com

ただし、具体的な企業名付きの公開事例はありません。考えられるケースとして、大規模な企業グループが持つ多数のブランドサイト群や、大学・自治体などのドメイン統合分析があります。このような場合でも、全ドメインに同一のGA4測定ID(Measurement ID)を実装し、クロスドメイン設定に各ドメインを登録することで、一つのGA4プロパティにデータを集約できます。前述のようにGA4の上限は100ドメインまでなので、「100以内」のケースであれば技術的制約なく実装可能と考えられます​ittechbuz.com

ドメイン横断ユーザー行動の可視化・分析手法(BigQuery + SQL)

GA4上でユーザーのドメイン横断行動を分析する方法としては、大きくGA4標準レポート/探索機能BigQueryエクスポート+SQL分析の二つがあります。

  • GA4の探索: GA4の「経路データ探索」を使えば、ユーザーがサイト間をどう遷移したかを可視化できます。しかし、複数ドメインを跨ぐ複雑なユーザージャーニー分析には現行UIではやや制約があり、エクスポートや高度な加工ができません​twooctobers.com。たとえば「ドメインAからドメインBへの遷移パターン」をGA4上で直接レポートするのは難しいケースもあります。
  • BigQuery+SQLによる分析: GA4では生データをBigQueryにエクスポートできるため、ユーザー単位でドメイン横断のイベントログをクエリで追跡可能です​twooctobers.com。エクスポートされたデータにはイベント発生元のホスト名(domain)も記録されており(フィールド名:device.web_info.hostname)​ga4bigquery.com、これを利用してユーザーごとの訪問ドメイン一覧や遷移経路を集計できます。例えば、SQLクエリで各ドメインごとのページビュー数を集計できます​ga4bigquery.com

このようにhostname(ドメイン名)を軸にした集計や、user_pseudo_id(クライアントID相当)でユーザーを特定してタイムスタンプ順に並べることでドメイン間の訪問順序を解析するといったことが可能です。実際、GA4データからユーザーのパスを再構築する方法について解説したブログ記事もあり​twooctobers.com、BigQuery上でページ閲覧のシーケンス(経路)テーブルを構築してLooker Studioに可視化する事例も報告されています。BigQueryでは自由度の高い分析ができるため、ドメイン横断のユーザージャーニー(どのドメインからどのドメインへ遷移しコンバージョンしたか等)も詳細に分析できます。

補足: GA4のエクスポートスキーマ上、各イベントにはその発生元ドメインが記録されるため、同一ユーザー(同一のuser_pseudo_id)が複数のhostnameにまたがってイベントを持っていれば、それがドメイン横断の訪問であると把握できます。したがって、BigQuery上では「特定ユーザーIDについて出現した異なるhostnameの組み合わせ」を調べたり、時系列で並べて「ドメインA → ドメインBへの遷移数」を算出する、といった分析が可能です。これらはSQLで集計・結合することで実現できます。

実装時の課題と対処方法

100ドメイン規模のクロスドメイントラッキングを実装する際には、いくつか注意すべき課題があります。

  • 自動リンク設定の挙動: GA4ではクロスドメイン設定したドメイン間のリンクに自動でパラメータ(_gl)が付与され、クライアントID等が引き継がれます​simoahava.com。この自動リンク(Linker)機能は通常、HTMLのリンククリックに対して働きます。課題となるのは、サイト側がこのパラメータ付きURLを正しく処理できない場合です。例えば、受け入れ側サイトが?_gl=以下のクエリ文字列を想定せず404エラーになってしまうケースがあります​stackoverflow.comstackoverflow.com。対処法としては、サイトのルーティングを修正して未知のクエリパラメータでもページが表示されるようにするか、どうしても難しい場合は手動でリンク先URLからパラメータを外す処理を挟んでリダイレクトするなどの対応が必要です(ただし後者の場合はクロスドメイン計測が失敗する可能性があるため、本質的にはサイト側で許容するのが望ましいです)。実際の実装現場でも「Analytics側でできることはなく、サイトがクエリパラメータに対応するよう修正するしかなかった」との報告があります​stackoverflow.com​。なお、GTAGやGTMの高度な設定で_glパラメータをハッシュ(#)として付与するオプションも存在しますが(Universal AnalyticsではallowLinker設定で可能でした)、GA4タグのUI設定上は基本的に自動付与に任せる形です。
  • クライアントIDの引き継ぎ: クロスドメインリンクでは_glパラメータ内に元ドメインのクライアントIDやセッションIDのハッシュが含まれ​simoahava.com​、遷移先ドメインでそれを読み取って同一ユーザーとして計測します​stackoverflow.com。このため、全ドメインで同一のGA4測定IDかつ同一のCookie設定(デフォルトではファーストパーティCookie)が使われている必要があります​simoahava.com​。通常はGA4タグを同一Measurement IDで実装すれば問題ありません。万一、自動リンク付与がうまく働かないケース(例えば特殊なJSによる遷移や、リンクではなくフォーム送信で遷移等)の場合、手動でリンクerを適用するスニペットを挿入したり、GTAGのlinker機能を直接呼び出すことで対応できます​simoahava.com
  • Cookie設定の問題: GA4ではクライアントIDを保持する_gaクッキーは各ドメインごとのファーストパーティCookieです。クロスドメイン計測ではこれを遷移先でも引き継ぐ仕組みですが、ブラウザのITP等でクッキーが短命化している場合、ドメインまたぎで同一ユーザーと認識できる期間が短くなる可能性があります。ただ、ITPはサードパーティCookieへの制限が主であり、GA4の手法(クエリパラメータで引き継ぎ&各ドメインでファーストパーティCookie再設定)は比較的影響を受けにくいです。またGA4では既定で自己紹介(Self-referral)トラフィックを自動検知して除外するアップデートがあり、クロスドメイン計測が正しく動作していれば自社ドメインからの参照流入は自動的に除外されます​owntag.eu。つまり、ドメインAからドメインBに遷移した際、_glパラメータを検出したGA4はドメインAを参照元として新たなセッションを切らない(内部トラフィックとみなす)ので、元の流入情報を保ったままユーザー継続とみなしてくれます​owntag.eu。この点、旧UAでは参照元除外リストの手動設定が必要でしたが、GA4ではかなり自動化されています。
  • 多数ドメインの設定管理: 約100ものドメインを登録する場合、設定画面での入力ミスや漏れに注意が必要です。GA4の「ドメインの設定」では「ドメインが次の条件のいずれかに一致する」等のマッチタイプを選択できます​be-marke.jp。例えば特定の文字列を含むドメインを一括指定することも可能なので、パターンが規則的な場合は条件をまとめて登録し、条件数を減らすと管理が容易になります。また、新規ドメイン追加時は漏れなくGA4設定にも反映させる運用フローが必要です。
  • 複数トラッカーの干渉: クロスドメイン計測では各ドメインで同一のGA4プロパティを使うことが前提ですが、場合によっては同一ドメイン上で別のGA4プロパティ(測定ID)も動かしたいケースがあるかもしれません(例:全サイト共通プロパティとは別に、個別ドメイン専用のプロパティもタグ設置するなど)。しかしこの場合、クロスドメインリンクによりクッキーの値が上書きされ、複数プロパティ間でユーザー識別子が競合する可能性があります​simoahava.comsimoahava.com。Simo Ahava氏も指摘している通り、GA4のクロスドメイン linkerはデフォルトのCookie名(_gaクッキー)でしか動作しないため、Universal Analyticsのようにトラッカーごとに別Cookie名を使って干渉を避ける手法が取れません​simoahava.com。したがって、一つのドメインで複数のGA4プロパティを動かす場合はクロスドメイン計測に注意が必要です。どうしても並行する場合、片方のGA4にはクロスドメイン設定を適用しない、あるいはMeasurement IDごとにコンテナやCookieを分離する(高度な実装が必要)といった対策が考えられます。

以上のように、GA4で約100ドメインものクロスドメイントラッキングを実装すること自体は技術的に可能であり​ittechbuz.com、実際に政府レベルでも導入が進んでいます​digital.gov。重要なのは、その規模ならではの設定漏れ防止の運用と、ユーザー識別情報が確実に引き継がれるようサイト実装を整えることです。適切に設定すれば、各ドメインを横断するユーザー行動をGA4上で一貫して把握でき、BigQuery等で統合分析することで貴重なインサイトが得られるでしょう。

参考資料・ソース:

  • GA4公式ヘルプ: クロスドメイン測定の設定方法(最大100件のドメイン条件を追加可能)​ittechbuz.com
  • GA4公式コミュニティ: 「100ドメインのクロスドメイン計測」に関する質問​support.google.com
  • 米国政府DAP事例: GA4 360プロパティで数千のサイトを計測​digital.gov
  • Analytics Mania: GA4クロスドメイントラッキング解説(クッキーとIDの仕組み)​simoahava.comsimoahava.com
  • Simo Ahava: GA4クロスドメインの課題(Cookie上書き問題と手動設定方法)​simoahava.comsimoahava.com
  • Two Octobersブログ: GA4ビッグクエリでのパス解析(ユーザージャーニー可視化)​twooctobers.com
  • GA4BigQueryドキュメント: hostnameを含むページ計測SQL例​ga4bigquery.com
  • Owntagブログ: GA4の自己参照トラフィック自動除外に関する解説​owntag.eu
  • Stack Overflow: クロスドメインリンクの _gl パラメータ説明​stackoverflow.comなど.

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